初めて娘を夫に預けて、日中2~3時間自由な時間をもらったのは、娘が2歳を過ぎた頃だったと思います。というのも、うちの娘は一般的な断乳時期を過ぎても授乳していましたし、頻繁におっぱいを欲しがる子でしたので、いつも私が傍にいなければいけませんでした。その日は車ではなく敢えてバスでお父さんとショッピングセンターまでお出掛けして、ランチをして、おもちゃ売り場で遊んでくるというスケジュール。これだけワクワク要素を盛り込めば、数時間は持つだろうと。出掛ける前にたっぷりおっぱいチャージをして、バス停で二人を見送ってしまうと、さあどうしたものか。困りました。「家事なんてするんじゃないよ」と夫には言われたけれど、急に自由な時間ができても何をすればいいのか分からないのです。でもせっかく作ってもらった時間なので有意義に使わなければ。
考えた末、まずはラーメン屋に行くことにしました(笑)。出産前、「好きな食べ物はラーメン・餃子・ビール」だった私。女性でもひとりでラーメン屋に躊躇なく入れるタイプの人間です。しかし産後は、まともにラーメンを食べたことがありませんでした。小さい子を連れてラーメン屋に行く選択肢はまず挙がりませんし、仮に行くことになったとしても、夫か私かどちらかが娘をみていて、交代交代で食べることになるため、目の前のラーメンはどんどん伸びてしまうのです。まだ小さい娘の食べられるメニューもなく、持ち込むのもなんだかな。それにラーメン屋は回転が命、子どものペースに合わせてゆっくりしてたらご迷惑だろうと思います。そんな訳で久々のひとりラーメン。最高でした。
次に向かったのはBASIE。一関にある老舗のジャズ喫茶です。20代の頃は夫とあるいは一人で何度かお邪魔していましたが、ここも子連れではなかなか難しい。久しぶりにこの音を浴びました。感激です。夫と娘よ、ありがとう。もう少し日常を忘れてこの空気に浸るかな。ところが、頭をよぎるのは「二人は今頃どうしているだろう、おっぱい飲みたいと言ってないだろうか、お昼は何を食べたのかな、お父さんちゃんとおむつ替えしたかな…」ということばかり。結局30分ほどの滞在でBASIEをあとにし、二人を迎えに行きました。車内のBGMはいつ振りかのHIPHOPで(笑)。娘と夫の姿を見たとき、なんだかホッとしました。やっぱりこれだよな、と思いました。CDをいないいないばぁに戻して、さぁうちに帰ろう。
今では娘も授乳期を終えて多少手が離れ、私も自由に動ける時間ができました。かと言って、ラーメン屋に行くようになったかと言えば、不思議なもので行かないですね。おかあさんになって、子ども中心の暮らしにガラリと変わり、それまで出来ていたことが出来ないというもどかしさや焦りを感じた時期もあります。だけどあの日はっきりと分かったのは、出産前のような暮らしを自分は案外望んでいないということ(望むのはじっくり考える時間ぐらいかな)。むしろ思っていた以上に私は「おかあさん業を愉しんでいる」のでした。大それたことはしていませんが、でも、出産前の私ならきっとしなかったこと、興味を持てなかったこと、苦手だったこと、それらの壁を簡単に越えてしまうのが、かあさんパワー。思いもよらないパワーを子どもからもらっているのです。時には悩むことや苛々してしまうこともありますけれど、人間としてまだまだだわ、と自分の未熟さを思い知らされ、これは私に与えられた試練だと思ってまた壁を乗り越えようと頑張れます。けれどそんな試練や疲れなど軽く上回って、子どもは最高。本当にかけがえのないもの、かけがえのない時間です。私がこれまでに頂いた一番の贈り物は「おかあさんになれたこと」かもしれません。娘と夫とそれぞれの家族とご先祖様、見守ってくださる皆さんに感謝しています。
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